ひとりひとりの人間が大切にされる国オランダの教育から学ぶ

2013年4月23日 14時31分 | カテゴリー: 活動報告

ひとりひとりの人間が大切にされる国オランダの教育から学ぶ

              ~リヒテルズ直子さんの話を聴いて~

 教育を考える時にはまず「どんな人間を育てたいか」を考えること。そんな問いかけから始まった講演会。オランダの教育の目的は、市民社会の一員となるために自分の持っている「個性」を伸ばし、社会参加できる力をつけ「共生」できる人間に育てること。今は子どもでも20年後は国を支える立派な大人。そういう視点を持ち学校教育を行っているオランダ。学校では①ICT機器の導入②特別支援教育の完全化③民主的シチズンシップ教育④システム理論の学校への導入⑤脳科学の研究成果の利用⑥性教育の復活と、脳科学の研究成果をもとに科学的根拠のある新しい手法を取り入れ創意工夫している。学校は上意下達ではなく、教師と子どもはフラットな関係にあり、子どもたちは相手の目を見ながら話すことができる、輪になって行う教育。

①     先生が教科書に沿って一律に教えるのでなく、電子ボードやipadなどのICT機器を活用し、子どもの知的好奇心を深めながら、一人ひとりのニーズや発達のテンポに合わせた教育を進めている。これはアメリカも取り入れはじめているし、佐賀県武雄市の教育委員会もモデル校で取り入れている。ただ全国に広まっていない。宿題は主体性がなくなるから一切ない。

②     特別支援教育はインクルージョン(包括的な教育)の考え方で、障がいを持つ子や経済的に恵まれていない子どもには必要な支援を整え、普通学級で学ぶことができる。

③     民主的シティズンシップ教育は学校を民主社会に生きる市民的行動の練習の場ととらえ、しっかり問題の解決の仕方を練習していく。例えば、子どもたちが喧嘩をしても仲裁はしない。互いの意見を聞きあい、どうしたらよいか解決の糸口を考えさせ、お互いの合意点を見出していくよう促す。この役目は大人ではなく、上級生が行う。これは実際の問題解決の方法だが、模擬訓練も実施している。

④     システム理論の学校への導入は、学校が「学習する組織」として教育のスキルアップを実現している。教師たちが教育のビジョンを共有し、チームとなり組織として個々人の持つ力を出し合い、スキルアップができるようシステム化しているのだ。

⑤     脳科学の利用は男女の脳の違い等いろいろな脳科学を研究し、子どもが一番伸びる方法を知った上で教育ができるよう、教員養成を行う。

⑥     オランダの性教育は単なる性や生殖器の情報ではなく自分と他人との境界線の尊重を学ぶ。また、他人の価値観を考えてオープンに性について話ができるスキルを学ぶ。

 こういった教育でユニセフ幸福度調査でトップのオランダ。またOECDのPISA学力調査でも欧州内ではフィンランドに次いで2位となっている。11.13.15歳の子どもたちの健康度調査では、「学校が好き、親と何でも話せる、生活に満足している」と90%以上の子どもたちが答えていた。オランダの子どもたちは幸福感と社会的能力が高く、学力も高いことが浮かび上がっている。では、日本の子どもたちはどうだろうか。OECD加盟国の中でも日本の15歳の子どもたちの自己肯定感の低さは先進国の中で飛びぬけて低く、子どもたちは居心地の悪さと孤独を感じていると調査結果が示している。

日本は「どんな大人に育てたいか」といった教育のビジョンを考えておらず、画一一斉授業で入試競争による選別を重視し、落ちこぼれを容認しているのだ。今は「学力向上」「いじめ」「体罰」の問題があるが対症療法であり、根本的な解決のための議論がされていない。子どもの20年後など考えておらず、ただ現在の社会をよしとしている社会ではないだろうか。わが国のように子どものこと(将来)など真剣に考えないなんて、オランダだと人権侵害に値し、ありえない話。これでは子どもの「自己肯定観」はいつまでたっても上がらないのは見えている。弱者に対する社会の在り方でその国の成熟度がわかるというが、日本は近代化を急いだあまりに、自立しきれず市民社会として未熟なのだ。民主主義も中途半端な民主主義。しかし、そんな中、多くの国のリーダーが国際競争力のある人材は学力編重教育からは生まれないこと、宗教や民族を越えた多様な共生が豊かで力強いことに気づきはじめている。ヨーロッパは二つの大戦で命を大切にするための教育が必要と気づき、個別発達のための支援と本物を知ることによる学びや総合的な学びを通し、健全な市民社会をめざしているのだ。

しかし、日本は自民党政権になりその市民社会の未熟さを助長するような政策が再びとられている。教師の柔軟な発想を許さず、教科書検定から教科書中心の授業、画一一斉授業や学力偏重教育など。子ども主体でなく国家主体の教育、いわゆる「公教育」ではなく「官教育」。そんな現代のおかしい教育を私たち一人ひとりがどのように変えていけるのか?それは、地方自治体単位で横のネットワーク作りにより可能となると提言を頂いた。自治体レベルで地域とともに学校を変えていくしかないと常々私は思っているが、そのことを再認識できた今日の講演会だった。それに加え、はっと気づかせられた言葉に「オランダ人は胸をはって自分はオランダ人でありヨーロッパ人でありグローパル人であると言える。」つまりその3つは同じ価値観で繋がっている。しかし日本人である私たちは日本人であるべき姿とアジア人、グローバル人であるべき姿がイメージできていない人がほとんどなのが現実だろう。

リヒテルズさんが今や世界の共通語となっている英語の情報を得て、正しい情報を自分のものにし判断できる、アジア人・グローパル人になってくださいという言葉が現在も私の心に響いている。