富山市角川介護予防センター視察 ~生活福祉委員会視察報告~

富山市角川介護予防センター視察
公設民営の介護予防事業を視察して

 私は目黒区の生活福祉委員会の委員として、2014年介護保険制度改定に当たり介護予防給付の対象外となる要支援12の「通所介護サービス」の先進的な取組をしている富山市を視察しました。高齢化率の高い富山市は、介護保険以外の財源で介護予防に取り組んでいます。10年の構想を経て平成23年に15億円の財源(内7億は補助金)と5億円の寄付(富山市ゆかりの角川ふみ子さんによる寄付)で小学校施設統廃合による学校跡地に「角川介護予防センター」をオープンしました。この施設は介護保険給付を使わず、全て自己負担の利用です。また、この施設の名称には寄付者の名前がつけられており、今後寄付者のモチベーションを上げ、更なる寄付者促進にもつながるのではないでしょうか。市長は当初、食・教養も含めた4倍規模の構想を立てていましたが、予算もかかるため「コンパクトシティ戦略」の大きな柱の一つとしてこの施設を組み込みました。

・ドイツ方式の介護予防

 40歳以上の要支援12を対象としたこの施設は、年中無休で医師が常駐し、水中運動、陸上運動、温熱療法、パ-ソナルケアの4つのサービスを提供しています。目的は高齢者の健康寿命を延ばすための介護予防と生活の質の向上。運営は指定管理による一般財団法人北陸予防医学協会と株式会社 ウエルネスデベロプメント共同体です。平成16年に設立されたこの会社は、欧州の温熱療法、タラソテラピー等をサービスの柱としています。年間運営費は18000万円でその内11000万円が市の財源、自主財源は7000万円、運営費のおよそ半分の8000万円が人件費といわれています。特徴的なのは30人の職員全員が専門職で事務職は配置していないという点です。

・利用サービスの内容

 サービス形態は、QOL(生活の質向上)ツアー、会員、ビジター、オプションの4つ。40歳からも利用はできますが主に75歳以上が4分の3を占め現会員数は約700名います。毎日250名が来場され年間8万人が利用されており、パワーマシンなどの器具も高齢者用のものを導入し、筋力アップをすることで日頃使わない筋肉を使いスムーズな動きができるように工夫しています。特に1200m掘れば温泉がでる地形のため、温泉を活用した温泉プール療法は人気メニューです。

・課題も見えてきた

 QOLツアーは家までの送迎付きで、3ヶ月ごとに更新されるシステムですが制限がありません。本来は1回参加した後は自宅で自主トレーニングという流れを目指していますが、実際は15名程度の同じ会員が更新しているのが実態のようです。会員は月7200円、年間72000円と決して安くありませんが低所得者を減免の対象にはしていません。非日常を演出することでとじこもり現象を軽減することをめざしていますが、全市民を対象としていない点は課題だと言えます。

・目黒区に参考になる点は

 温泉療法を目黒区に導入することはできませんが、徒歩圏内にある体育館や住区センターで「角川介護予防センター」の実施している健康寿命を延ばす多様な介護予防プログラムを参考にすることはすぐにでもできることだと思いましたので、目黒区内にも取り入れられるようにしたいと思います。